中長期計画の限界、先が読めない時代に長期計画はどう考える?
以前は、「5年計画をきちんと作り、それを達成すること」が理想的な経営スタイルとされていました。
売上目標を立て、設備投資や人材採用、資金調達まで細かく計画する。
銀行や株主、補助金申請では、今も一定の説得力を持つのは事実です。
しかし、実務の感覚としては「それは危うい」と強く感じるようになりました。
モノ不足の時代なら、まっすぐ頑張れば計画に近づけたかもしれません。
ところが今は、
・AIの急速な進化
・国際情勢の変化(米中対立など)
・為替や金利の不安定さ
5年先どころか、2〜3年先すら読みにくい時代です。
このような中で、楽観的な計画を前提に固定費や、設備投資・人材採用を一気に進めれば、
想定外の出来事が起きたときに資金が足りなくなる可能性があります。
では、計画は不要なのでしょうか?答えは「いいえ」です。
大切なのは、
・細かすぎる数字よりも「どこを目指すか」という方向性(Direction)
・低限やるべきことを日々コツコツ続ける規律(Discipline)
たとえば「どの顧客にどんな価値を提供し続けるのか」「財務的には借入と自己資本のバランスをどう保つのか」
といった方向性を固めたうえで、それに沿って柔軟に動いていくイメージです。

「DCP」で回す柔軟な経営
そこで役立つのが従来の「DCPサイクル」です。
Planを重く作り込むのではなく、まずD(Do=やる)を小さく素早く回し、
C(Check=どうだった)で数字と現場の感触を確認し、P(Plan=どうする)で修正・撤退・追加投資を決める。
従来のPDCAのように、最初に重たい計画を作るのではなく、まず小さく動き、結果を見て調整していきます。
このD→C→Pのループを月次あるいは四半期ごとに回す前提で、
税務や資金の意思決定を行うことが、変化の大きい時代の経理・財務の基本姿勢だと考えています。
2026年の税金対策は「方向性」をつかむ
2026年の税制を考えるとき、細かい条文を全部覚える必要はありません。
重要なのは、「どの方向のインセンティブが強まっているか」という方向性を押さえたうえで、
自社の投資・人件費・事業承継をどう設計するかです。
近年の流れを大づかみに見ると、次のような三つの柱が続いており、
2026年もこの軸は大きくは変わらないと考えられます。

年初の今は、この三つの柱について「自社はどの方向に進むのか」を大まかに決めるタイミングです。
実際の投資や賃上げの判断は、DCPサイクルで進めます。
つまり、まず小さく「やってみる」(Do)、決算の数字や現場の手応えを見て「振り返る」(Check)、
そのうえで翌月や翌期の進め方を「見直す」(Plan)という流れです。
そのためには、日ごろから次のような準備をしておくことが大切です。
・「本来必要だった賃上げ・人材育成・デジタル投資」を、どの年度にどの程度前倒しするか
・繰越欠損金・各種税額控除の残高と期限を一覧化し、2026~2028年度の3か年でどう使い切るか
・事業承継・持株整理・M&Aなど、時間のかかるテーマをいつ始めるか目安を決めておく
こうした日々の地道な準備が、後からDCPを回すときの大きな支えになります。
2027年に向けた資金繰りの計画
最後に、2027年の年初を安心して迎えるための資金繰りについて考えておきましょう。
基本の考え方はとてもシンプルです。バランスシートを軽くしつつキャッシュを厚く保つことです。
無理な設備投資や過剰な在庫を避けること、
売掛金や仕掛案件の回収が遅れていないかを確認すること、短期借入に頼りすぎないこと。
こうした点を意識するだけでも、急な環境変化に対応できる余裕が生まれます。
身軽な財務体質があれば、DCPサイクルで新しい取り組みにチャレンジし、
うまくいかなければ早めに方向転換することも可能になります。
資金繰り計画は、一度作って終わりではありません。
毎月の実績(Do の記録)を確認しながら、毎月(Plan の見直し)ていくことが大切です。
実務では、次の2つをセットで管理するのがおすすめです。
・通常入出金:12か月ローリングの資金繰り表
・特別入出金:税金・賞与・借入返済・設備投資など大口支払を重ねた2年分のカレンダー
とくに年末・年度末は、法人税や消費税、償却資産税の納付、冬季賞与の支給、
借入金の期末返済、駆け込み気味の設備投資などキャッシュアウトが重なる時期です。
2026年末から2027年にかけて資金が一番減るタイミングを早めに把握し、
借入枠の確保や支払時期の調整、投資の前倒し・先送りなどを事前に検討しておくことが、
安心して次の年を迎えるための現実的な備えになります。

そして、こうしたモニタリングと資金計画を支えるのも、最終的には規律です。
整理整頓を徹底し、月次決算をできるだけ早く締めること。
これは地味ですが、資金繰りを安定させるための大切な土台です。
こうした基本的な規律が守られてはじめて、DCPサイクルが現場と数字の両面で機能し、
「変化に強い財務体質」をつくっていけるのだと思います。