● IT化とDXの違い
近年、ビジネスの世界では「IT化」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という
二つの用語が似通った意味でよく使われますが、これらは明確に異なる概念です。
ペーパーレス化は紙の使用を減らすことで、IT化は既存業務の効率化を指します。
一方、DXはITを活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、新たな価値を創出することを意味します。
その結果、組織の競争力を高め、市場での成長をもたらす可能性があります。
● デジタルトランスフォーメーションの経済効果
DXの経済的な影響を理解するために、寿司屋を例に取りましょう。
「伝統的な職人がいる寿司屋(職人寿司屋)」と「DXを用いた回転寿司(DX寿司屋)」を比較します。
職人寿司屋では、お客様一人あたりの平均支払い額が10,000円で、500円の利益が得られます。
一方、DX寿司屋では、一人あたりの支払い額が1,500円で、45円の利益です。
この数字だけを見るとDX寿司屋の利益が少ないように見えますが、
職人寿司屋は一日に10人しか対応できないのに対し、DX寿司屋は一日に500人を対応できます。
DX寿司屋では、会計や注文の自動化、在庫管理の効率化が可能で、
多くのお客様を対応できるため、最終的な利益が大きくなります。
この例から、DXがビジネスをどれだけ効率化し、利益を最大化できるかがわかります。
また、お客様にとっては、伝統的な寿司屋とDXを活用した回転寿司の両方が存在することで、
より多様な選択肢が増え、全体的な満足度が高まります。
● DX促進の問題点
多くの企 業がDXを実施したいと考えていることは間違いありませんが、
実際にこれらの取り組みを進めるのは容易ではありません。
2018年の経済産業省の調査で、
DXを進める上での具体的な障壁として以下のようなことが挙げられました。
・使いこなす人材がいない
・コストがかかる
・導入に必要な通信インフラ等が不十分
・利活用や導入に関する法令などの整備が不十分 (以上、経済産業省 産業競争力強化資料より)
以上のことからもDXを推進するためには、専門的な人材の確保、コストの問題、
インフラの整備、法規制の明確化など、多面的な アプローチが必要であることが分かります。
● 今回の税制改正の概要
政府はDXの促進のため、DX投資に対してインセンティブを与える
DX投資促進税制を導入しています。
具体的には、DX投資に対して3%または5%の税額控除、または30%の特別償却が与えられます。
2023年の改正では、DX投資の促進における前出の課題克服のため、
事業適応計画の認定要件が見直されました。
また、売上高の増加や海外売上高比率の一定割合以上が新たな要件として設定されています。
対象となる法人は青色申告書を提出する法人で、認定事業適応計画に従う必要があります。
対象資産にはソフトウェアや繰延資産が含まれるようになり、
適用期間は2025年3月31日まで 延長されました。
経済的な成功を収めるための鍵は、世界に新たな価値を生み出すことです。
DXを通じて革新的なサービスを創造することは、多くの人々に利益をもたらすと同時に、
結果的に会社は多額の利益を得ることになります。
国の支援を受けながら、社会に価値を提供することで、成功への道が開けるでしょう。