103万円の壁って何?
103万円の壁は、特に学生アルバイトやフリーターの就労形態に大きな影響を与えてきました。
これまで、子ども(学生やフリーターなど)が1年間の収入を103万円以内におさえていれば、
世帯主である親は38万円(19〜23歳は63万円)の扶養控除を受けることができ、所得税を軽減できる仕組みでした。
しかし、103万円を1円でも超えてしまうと、親の扶養控除が一気に失われてしまうという
"段差の大きい制度"のため、多くの子どもがこの金額を意識して働き方を調整していました。
実際、多くの企業では「103万円の壁対策」として、
労働時間の調整や出勤日数の制限といった対応が日常的に行われていました。
特に年末が近づくと、「もう残りのシフトは入れません」
という会話が職場で交わされることも珍しくありませんでした。
労働者側も月々の収入を細かく計算し、
年間収入が103万円を超えないように自ら調整するケースも多く見られました。
このように、103万円の壁は単なる税金の問題を超えて、
労働市場全体の効率性や生活設計にまで大きな影響を与えてきたのです。
2025年の税制改正でどう変わる?
令和7年の税制改正では、いわゆる「103万円の壁」が実質的に撤廃され、
「収入が増える=控除がゼロ」という極端な制度が見直されます。
「130万円の壁」が「160万円の壁」に引き上げられ、
それを超えたとしても控除額が段階的に縮小する新たな仕組みが導入されます。
つまり、働いた分だけ損するような制度から、
「収入が増える=控除は少しずつ減る」というなだらかな仕組みに変わります。
これにより、子の年収が少し増えただけで世帯全体の手取りが減少するという不合理な状況が解消されます。
改正ポイント:①給与所得控除が+10万円 ②基礎控除が+10万円 ③基礎控除が年収に応じて段階的上乗せ
出展元:自民党公式発表
https://www.jimin.jp/news/information/210090.html
アルバイト・フリーターにも広がる自由
この制度改正により、これまで「親に迷惑をかけないように働き方をセーブしていた」
若者たちは、ようやく自分のペースで働けるようになります。
「もっと働きたい」「責任ある仕事にも挑戦したい」など、前向きな気持ちで働ける環境が整うことは、
労働力不足が深刻な業界にとっても大きなメリットです。
働く人たちの心理的変化も大きい
103万円の収入制限を気にせず働けるようになると、
働く人たちの心理面に大きな変化をもたらすことが予想されます。
これまで多くの学生やフリーターは、年末に近づくにつれて出勤日数を調整したり、
残業を断ったりと、常に年収を意識した働き方を強いられていました。
103万円の壁の撤廃で、まず最も大きな変化は「収入の上限」を気にせずに働けるという解放感でしょう。
また「社会とのつながり」という観点でも変化が生まれるでしょう。
・「もっと稼ぎたい」「やりがいのある仕事を続けたい」というモチベーション
・職場での人間関係が深まり、働くこと自体が楽しく感じられる
・スキルアップやキャリアの意識が高まる
一方で、これまで「103万円以内」で働いてきた人にとっては、この変化にストレスを感じる人もいるかもしれません。
制度変更がプレッシャーに感じられることもあるでしょう。
特に学生アルバイトなどは、学業とのバランスをどう取るか悩む場面も出てくるかもしれません。
いずれにしても、この制度変更は単なる税制の問題を超えて、多くの人々の働き方や人生設計、
そして心理面に大きな影響を与える変革となることは間違いありません。
企業に求められる3つの対応
制度が変われば、企業側も対応が必要です。
特にアルバイトやパートタイマーを多く雇用している業界では、以下のような対応が求められます。
1. 教育・研修制度の充実
長く働けるようになる従業員に対し、スキルアップの機会を提供することが、
従業員の定着率向上や生産性向上の両面で効果があります。
2. 正社員登用・キャリアパスの整備
「ただのアルバイト」で終わらせず、長期的な雇用の選択肢、正社員登用制度の充実を用意することも重要です。
3. 働きやすい職場文化の構築
これまで「アルバイト・フリーターはあくまで補助的な存在」という意識が暗黙のうちにあった職場も少なくありません。
雇用形態に関係なく、一人ひとりが価値ある存在として尊重される企業風土を作ることがこれからの時代には欠かせません。
多様な働き方を受け入れ、互いに尊重し合える職場づくりが、企業の競争力強化にもつながります。
【まとめ】新制度は「働き方の選択肢」を広げるチャンス
「103万円の壁」の撤廃は、税制の単なる変更にとどまりません。
個人にとっては、自由な働き方と安定した収入を得られるチャンス。
企業にとっては、多様な人材の幅を広げるチャンスです。
新しい制度を前向きに捉え、適切な対応を取ることで、企業の成長と従業員の満足度向上の両立が可能になるでしょう。
企業と個人がそれぞれのスタイルで「働き方のアップデート」を進めていきましょう。